初稿2016年11月1日
突然だが、あなたは話をしていて「言ってることがよくわからない」と相手に言われたことがあるのではないだろうか?
一生懸命伝えようとしてるのにも関わらず、なぜ話が上手く伝わらないのだろうか。
物事を過不足なく相手に伝えるには、自分の頭の中をしっかり整理しなければいけない。
頭の中を整理するには、どうすればいいのか?
その謎を、MECEという概念を知ることで解きほぐしていこう。
目次
MECEは、ビジネスマンとしての付加価値をつけるスキル
先に、MECEとは何か簡単に言っておくと、「フレームワーク」といわれる「型」であり、物事を「もれなく、ダブりなく」整理する技術だ。
ビジネスパーソンであれば研修等で一度は聞かされる単語だろう。ではなぜMECEをわざわざ研修を行って習得させるのか。
MECEを習得する意義として、ビジネスパーソンとしての付加価値を見出せるという理由が大きい。
例えばMECEを習得することで、
- 上司を納得させる報告・提案をする事ができる。
- 物事の全体像を把握し、見落としなく客観的に分析できる。
- 物事を効率的に進め、最善の結果に導き出す計画を立てる事ができる。
- 膨大な資料の取集・整理をすることができる。etc…
これらのビジネスマンとしての付加価値をつける事ができる。
また、別の視点からMECEの必要性を説明すると、MECEはいまやビジネスにおける思考の「グローバル・スタンダード」になっている。
つまりビジネスマンとして仕事を進めていくうえで、現代では必須スキルと言っても過言ではないだろう。世界で通用するスキルでもある。
しかし一方で現実では、多くの人がこのスキルを「知っている」だけで、「使える」レベルにまで昇華させることができていない。
あなたがこの記事を読むことでMECEを正しく理解し、正しく使えるようになる確率が少しでも上がればという思いで、この記事を作成した。
ぜひ、MECEをどこかで聞いた事があったとしても、今一度MECEを習得し直す意味を込めて読み進めてほしい。
1.MECEって本当のところどのように役に立つのか?
冒頭でも少し説明したが、MECEは本当のところどのように役に立つのかというところをもう少し詳しく説明する。
なぜ、始めに説明しておくというと、意外にもMECEの存在意義をきっちり把握できている人は少ないからだ。
存在意義を把握していなければMECEの重要性がわからず、結局「知っているだけ」で終わってしまい、せっかくの素晴らしい概念を保持することができない。
概念を強固に保持して頂くためにまずMECEはなぜ、ビジネスパーソンが身につけるべきスキルなのか、その理由を明かしていこう。
1−1.全体が俯瞰できるようになる
多くの人は、話や物事をうまく構造化することができていない。
構造化することができないと、思いつきでバラバラと相手に伝えてしまったり、物事の結論を出すのにかなり時間がかかってしまったりする。
話や物事をしっかりとMECEで構造化することができれば、全体が見え、それぞれがどういう話、もしくはどういう物事の構造をしているのかが頭の中で整理され、可視化される。
また、物事にはっきりとした優先順位がつき、何が一番大事なのかを判断することもできるようになる。
1−2.捨てる能力が身につく
重要度が判断できると、いらない部分を捨てて、自信を持って重要な部分にフォーカスして時間を使うことができる。
自分が無駄な時間を過ごしてしまっているのは、やらなくてもいいことにまでフォーカスしてしまっているからだ。
MECEでやらなくてもいいことを可視化することで、大事な部分以外なことはやらないと認識できるようになる。
1−3.意思決定のスピードが上がる
全体を俯瞰し、捨てるべきことが明確になってくれば、結果的に意思決定のスピードが飛躍的に上がる。
一つの行動に対して、何日もかけて悩むことがなくなり、一瞬で物事が判断できるようになるからだ。
そしてその判断もMECEによって的確になり、仕事全体の質が上がる。
番外:買い物上手になる
以上3つのメリットを踏まえれば、MECEはビジネスではなく日常においても役に立つことがわかる。では、日常においてMECEが使える場面はどのような場面なのだろうか。たくさんあるが、ここではイメージしやすいように買い物の例を挙げよう。例えばあなたが、スーパーに買い物に行こうとした時、MECEをうまく活用すれば、買い物の全体像を把握し、何を買うのか?ということが整理され買うべきものが明確になる。つまり、スーパーに行ってからあれやこれや悩む必要がなくなるということだ。すでに家にあるのものを買うこともなくなるし、絶対に生活に必要なものを買い忘れることがなくなる。MECEを身につければ、買い物においても建設的に考え「上手」に買い物できるようになる。
2.では肝心のMECEとは具体的に何か?
メリットばかり先にお伝えしたが、ここからが重要だ。
MECEとは何か?
この質問に対して今一度具体的に説明していこう。
もし、以前からMECEを聞いてきて「知っている」いても、今一度ここでMECEの定義をはっきりさせておいてほしい。
MECEとは、論理的思考方法と言われるロジカルシンキングにおいて、基本の考え方の1つである。
そしてMECEという文字列なのは以下の単語の頭文字をとって構成されているからだ。
Mutually (互いに)
Exclusive (排他的で重ならない)
and
Collective (集めると)
Exhaustive(全体になってスキマがない)
これだと意味がイマイチわかりにくいかもしれないが、
これらの内容を綺麗に和訳すると「モレなく、ダブりなく」という意味になる。
MECE=「モレなく、ダブりなく」と覚えておくといいだろう。
また、MECEは相手に自分の土俵を示し、自分の土俵に乗せやすくする技術だ。
自分の土俵の全体像がしっかり定まらない状態では、相手に伝わるコミュニケーションはとれない。
どんな相手も理解させ、「説得」させようとするためには、まず、はっきりと自分の考えていることの全体像をMECEで自分自身把握する必要があるということだ。つまりMECEは、「モレなくダブりなく」自分の考えを整理し、考えを相手に伝える前に自分の土俵をしっかり整えるための技術である。
冒頭に「相手に何を言っているのかわからない」と言われないためにMECEを習得すれば良いと説明したが、ここでようやくその必需性を強く感じていただけたかと思う。
2−1.MECEのイメージ
概念は把握していただけたかと思うが、このままだとなかなかイメージが湧かないと思うので、
- 「モレなく、ダブりなく」できているMECE状態
- MECEになっていない状態
この2点を図で説明していく。この2点の違いをイメージできるようになれば、自分が何かをMECEにしようと試みた時に、より、「モレなく、ダブりなく」出来ているか判断できるといった利点が生まれる。何がMECEで何がMECEでないのか、違いをはっきり理解してみてほしい。
①「モレなく、ダブりなく」できているMECE状態
ではまず、これが「モレなく、ダブりなく」出来ているMECE状態のイメージだ。
1つの枠に対して、それぞれのゾーンがモレもなくダブりもなく線引きされている。
具体例を出すと、日本地図もMECEだと言える。
日本という全体に対して、47都道府県しっかり網羅されている。これがMECEのイメージだ。
②MECEになっていない状態
では逆にMECEになっていない状態、整理がされていない状態というのはどういう状態か?
これらがMECEでない状態だ。全部で3パターンある。
話が通じない状態・物事をよく理解していない状態というのは、総じてこの上記の3パターンに該当する場合が多い。では、ここから上記3パターンに該当してしまうとどうなってしまうのか、
というところを説明していこう。
3.MECEにおける「もれ」「ダブり」は重要
ここまで「モレなく、ダブりなく」という言葉を散々聞いてきたかと思うが、なぜ、そこまで「モレなく、ダブりなく」というワードを頻出させるのか?それは、それほどまでに「モレ」と「ダブり」の概念がビジネスにおいて非常に重要な概念だからだ。MECEがビジネスにおけるグローバル・スタンダードになっている大きな理由として、「もれ」や「ダブり」はタブーであり、タブーを犯すことによって生まれる弊害が厄介なものになりうる点が挙げられる。
ではその弊害とは具体的に何なのか?
ここから「もれ」や「ダブり」が生じることによって生まれる弊害について具体的に説明していく。今一度「モレ」と「ダブり」の重要性について認識してほしい。
3−1.MECEにならず、日常で「もれ」や「ダブり」があるとどうなってしまうのか?
「もれ」と「ダブり」が生じることによって日常においてどうなってしまうのか?
トランプを想像してほしい。トランプの54枚(JOKER含む)というのは、まさにMECE状態だ。
上の図のように、全54枚に対して、
赤色のハート13枚 赤色のダイヤが13枚 |
黒色のクローバーが13枚 黒色のスペードが13枚 |
ジョーカーの2枚 |
合計すると全て54枚になっているので、これはまぎれもなくMECE状態だと言える。では、逆に、トランプにおけるMECEでない状態はどのような状態だろうか。
具体例を二つ挙げよう。
- トランプに、もしハートのクイーンが「無い」などと言った「もれ」が生じた場合MECEとは言えない。
- トランプにもしスペードのエースが二枚あるという「ダブり」が生じた場合MECEとは言えない。
このようにトランプが「54枚の状態」でない場合、それはMECEとは言えない。もしこのような状態で、みんなでトランプをしようとなった時に「物言い」が生じるのでは目に見えてわかる。
日常の目的あるコミュニケーションにおいても同じだ。
相手に自分の持っている情報を不満なく受け入れてもらうには、「もれ」なく100%伝える必要があるし、「ダブり」なく同じことを何度も言わないことが大切だ。例えば、誰かにおつかいを頼む時に自分の買ってきてほしいものが頭の中で整理されてあれば、相手にモレもなくダブりもなく伝えることができるだろう。しかし、買いたいものを整理せずに雰囲気で伝えてしまった場合、何らかの問題が生じてしまうだろう。
3−2.MECEにならず、ビジネスで「もれ」「ダブり」があるとどうなってしまうのか?
ビジネスにおいて「モレ」や「ダブり」があると後で取り返しのつかない損失を招くことになる。まず「モレ」の場合どうなるとかというと、例えば購入すればとても利益が出るとわかっている商品があるとしよう。その商品が、リストから「モレ」ていて購入できなければ、機会損失を招いてしまうだろう。
また、「ダブり」があるとどうなるだろうか?
ダブりが発生してしまうと、資源配分が重複して大変な非効率を起こすことになる。例えば、同じ顧客に対して複数のセールスマンが同じアプローチを仕掛けるといった事例が挙げられる。
何回も同じ顧客にアプローチしたとこで、状態は変わらず非効率なだけである。場合によってはマイナスにもなりうる。
「もれ」「ダブり」はこのようなデメリット起こすことになってしまう。長くなったが、ここまででMECEの必要性をかなり感じて頂けたかと思う。
さて、ここから改めて「MECEの作り方」を解説していこう。
3STEPに分けて解説していく。
①MECEを作る上で注意すべき点を知る。
②できるだけ綺麗に作る方法を知る(視点を揃える・切り口を考える)
③「モレ」「ダブり」がある場合の対処法を知る。
この3ステップを踏まえれば、あなたも「MECE」をマスターすることができる。
4.MECEを作る上で注意すべき2点
まずはじめに注意しておくべき MECEの認識を今から2つ挙げておく。
なぜこれをはじめに挙げておくか、と言うと、この2つの罠に嵌ってしまっている人は割と多いように感じるからだ。正しい認識をしなければ、せっかく学んでもあらぬ方向に向かっていくことになってしまう。そうならないために、今から説明する2か条はしっかり押さえた上で、MECEの作り方の部分に入って行ってほしい。
4−1 .完璧にMECEにする必要はない
1つ目に注意する点はMECEといえど、完璧なまでに作り上げる必要はないということだ。ここであなたは違和感を感じただろう。
なぜ、あれほどまでに「もれなくダブりなく」しなければいけないと言っていたのに、ここにきて完璧に作り上げなくていいと言い出したのか?
それは、あまりにも完璧なまでにMECEにしようとすると、MECEを考えるだけで、膨大な時間を費やしてしまうからだ。
私たちは、プロのコンサルタントではない、あくまで日常や仕事の業務改善が目的であり、MECEを完璧に作り上げることを目的としてはならない。
あくまで、もれなくだぶりなくのレベルでMECE感があれば良い。
done is better than perfect
これはFacebookを立ち上げた実業家マック・ザッカーバーグの言葉だが、日本語に訳すと、「完璧を求めるよりも、まず終わらせる」という意味である。
そのような考え方もMECEを作成していく上で頭の中に入れておかなければいけない。
何度も言うがMECEはあくまで手段であり、それ自体が目的になってしまうのは避けたい。
4−2.MECEと他のフレームワークを混同しない
あなたは、ロジックツリーやSWOT分析、4P分析、4C分析などをご存知だろうか?
これらは一種ビジネスにおけるフレームワークなのだが、これらをMECEと混同してしまう人がいる。
ここを混同してしまうと、全体の取り違えが生まれてしまう。後ほど説明するが、「切り口」を間違うことはMECEにおいて致命的だと言える。
なぜなら、MECEにおいて大切なのは全体とは何かを適切に捉えることだからだ。
確かにMECEとは別のこれらのフレームワークを使うことによって、「もれなくダブりなく」を作ることもできるが、目的の取り違えが生まれてしまう場合が生じる。
なんとなくSWOT分析や4P分析をフレームワークとして使っておけばMECEになると認識してしまうと、適切な「全体」を示すものにならない場合に、「モレなく、ダブりなく」作成できてもそこに意味は無くなってしまうことになる。
これらの他のフレームワークはあくまでMECEを実行するためのツール(フレームワーク)の一つに過ぎない。
MECE=「もれなく、ダブりなく」を実現させる入り口の概念として、他のフレームワークは、それを助ける補助装置と考えればいいだろう。
5.MECEの綺麗な作り方
MECEの注意すべき点が十分に把握できたところで、ここからが実用できるかできないかの差となる「作り方」の部分を説明していく。
MECEを「知っているだけ」で留まらないためには、どのようにして、あなたが整理しようとしている問題をMECEを使ってスマートにすることができるのか、その点が一番重要だ。
ここが「知っているだけ」と「使える」差になってくるので、MECEの綺麗な作り方はこの記事においても重要なトピックであると認識して頂きたい。
では、どのようにしてMECEを作ればいいのか。MECEの作り方として念頭に置いてほしい点が1つある。
MECEを作る時にレベル感を揃えることを念頭に置こう。
ここで指している「レベル感を揃える」とは、自分がMECEにするべき対象の論点が客観的に見た時に、ずれていない状態。相手と自分の認識にずれが生じていいない状態を指す。
レベル感を揃えることは、大きく分けて2点挙げられる。それは「視点を揃えること」と「切り口は何か」という2点である。
これを取り違えてしまうと、MECEの全体像が大きく変わってしまうので、特に気をつけたい。
5−1.視点を揃えること
視点が異なってしまう場合、MECEのレベル感もばらついてしまう。例えば、あなたが「給料日に思うこと」は何か想像してほしい。
おそらく、「今月の給料は少ないな」もしくは「今月の給料は多いな」と頭の中で思っていたのではないだろうか?
一方で”経営者”という立場に立ってみると「人件費はもっと増やしてもいいかもな」もしくは「人件費をもっと節約せねば」と考えるのではないだろうか。
という風に、誰の視点で物事を見るかによって物事の捉え方は大きく異なってしまう。
この点を考慮しないと、とんでもなく見当違いのMECEを作ってしまいかねない。誰の視点で物事を見るか、シンプルだがこれだけはしっかり押さえておきたい。
5−2.切り口は何か?
さて次にMECEにおいて大切なのが、どの切り口で物事を分解していくかということだ。
この切り口を間違えば、見当違いな結果にたどり着いてしまう。ここがMECEを作る上でスマートになるかならないかの明暗を大きく分けることになるのだが、ゼロベースから最適な「切り口」を見つけるのは難しい。
また、ゼロから適切な「切り口」を発見しようとすると、どうしても経験によって得意不得意が生じてしまう。
そこで、今から説明する4つの切り口を参考に考えてみてほしい。
- 要素分解する方法
- 因数分解する方法
- ステップ分けする方法
- 物事の両面を対象概念でとらえる方法
これらフレームワークをたくさん持っておくことで、どのような問題に対しても素早く分析し効率的に情報を整理することができる。
まるでドラえもんのように、どのような問題に対しても解決できる道具を出せるように、MECEポケットをたくさん持っておこう。
①要素分解する方法
一つ目は要素分解する方法だ。要素分解とは何か?例えば、人間を「男・女」「年齢」といった風に人間としてグループ化して全体を構成要素に分けていく方法が要素分解する方法だといえる。この要素分解での方法では、大きく2つのタイプがある。
1.完全に要素分解できるタイプのMECE
例えば、先ほど説明した通り、年齢や性別この場合、確実に「もれなくダブりなく」分解できる。
2.これを抑えておけば、大きな重複・漏れはない、という約束事になっているMECEの切り口。
例えば、3C分析やマーケティングの4Pなど。ただ、この場合後でもう一度、「もれ」「ダブり」の検査をすることをお勧めする。前述したが、MECEと”混同”させてしまわぬように注意が必要だ。
②因数分解する方法
MECEは足し算だけだという認識だけではそれこそ「もれ」である。MECE足し算以外も考えてみることも時には必要だ。
例えば、「売上高」でMECEに分類しようとすると
- 来店数=日本人+外国人
- 売上高=Σ(都道府県別の売上高)
このように足し算で分類することができるが、それだけでなく掛け算でもMECEにすることができるといった発想を忘れてはいけない。
- 売上高=顧客単価×顧客数×購入頻度
このような掛け算でもMECEにできることは頭に置いておきたい。
③ステップ分けする方法
物事を起点から終点までステップに分けてとらえる考え方だ。要は時間軸別だと考えていただきたい。例えばPDCA(計画→実行→評価→改善)といったステップに分けたフレームワークや過去・現在・未来と時間軸で分けしてもいいだろう。
④物事の両面を対象概念でとらえる方法
何かをきっかけに対になるものを発想する方法だ。
例えば、
質・量 事実・判断 善・悪 |
といったものだ。こうした対象概念で捉えていくのは、比較的簡単にMECEにしやすい特徴がある。なぜなら、確実に事象を100%で捉えることができるからだ。
以上で4項目の説明はざっくりとさせてもらったが、具体的な切り口についてもっと知りたい方はこちらの方のブログページを参照して貰えば良いかと思う。「視点」「切り口」を正しく選択し、MECEにおいてレベル感を揃えることは大切だ。視点を揃え、適切なフレームワークでとらえることができれば、綺麗にMECEを作ることができる。
6.MECEを使用しても「もれ」「ダブり」が起きた時の対処法
ただ、いくら全体の枠や切り口を考えてもどうしても「もれ」や「ダブり」の発生を見逃してしまうことがある。そこで、どうしても腑に落ちないMECEになってしまった時、ぜひ今から説明する「もれ」「ダブり」の対処法に沿ってみることで糸口を見出してみてほしい。
6−1ダブりの対処法
ダブり、つまり重複している内容はどう判断して、チェックすればいいのか?
「男」と「女」という簡単なものなら瞬時に判断できるが、ビジネスや複雑な会話だと「ダブっている」のが判断できなくなる場合がある。
ここで具体例を出そう。「プロフェッショナルとして認められたい」というのと「一人前の人材として責任ある仕事をしたい」これは、ダブっているだろうか?これらは一見したところ同じ意味合いのように感じられる。
そのした判断が難しい場合「MECEマトリクス」を使用することによって、この2文がダブっているのかどうかを判断することができる。
MECEマトリクスとは、このような図になる。
高田貴久氏『ロジカル・プレゼンテーション 』より図を改変して使用
MECEマトリクスを使用し、「その状態が存在しうるか?」を考えると、「一人前の人材として責任のある仕事をしていないのに、プロフェッショナルと認められる」は、明らかにおかしいので、この箇所だけ「×」となる。
それ以外は問題ないので「○」を入れる。さらにここで、昔習ったかと思う数学の「集合の概念」を用いて検証してみる。
「プロフェッショナルとして認められたい」を集合Aとし、「一人前の人材として責任ある仕事をしたい」集合Bとした時このようになる。
高田貴久氏『ロジカル・プレゼンテーション 』より図を改変して使用
このようにAとBの関係を集合で表すと「実はダブっている」ことがわかる。このダブりのチェックが終われば、あとはダブりを排除すればいい。
ダブりを排除するにはBからAを引けばダブっていない状態になる。BからAを引くと、つまり③が残る。
③とは具体的に何だっただろうか。MECEマトリクスを確認してみると、「責任ある仕事をしているが、プロフェッショナルではない」状態だと把握できる。
これがMECE状態であり、全世界共通で伝わるメッセージになる。
このようにして、複雑な「ダブり」が予想される場合、少し面倒だが、MECEマトリクスを使用し、集合の概念で洗い出せば、「ダブり」は完璧に排除できる。ダブりというのは、土俵がダブるからダブる。
別々の土俵に相撲取りが一人ずつ上っていれば、ダブりは起きていないことになる。MECEマトリクスを上手く使用して、ダブりをなくそう。
6−2.もれの対処法
「もれ」が生まれる大きな原因としては、シンプルだが多くの場合、「もれ」に気が付かないからだ。
大事なのは、「もれはないか、もれはないか」としつこくチェックすることだ。この「習慣」を身につけることが第一で、これは意識できるかどうかの問題が非常に大きくなる。
例えば日常において、旅行に行く際の忘れ物がないかチェックする作業も、もれのチェックのプロセスに当たる。
旅行に必要なものを要素分解していくことで、「もれ」を防ぎ快適な旅行を実現することができる。これも切り口によって考え方がたくさんあるのだが、例えば、旅行の持ち物を、「移動」「宿泊」「遊び」などで分類し、
移動における交通費は持ったか?
宿泊中の着替えは完璧か?
遊び道具は持ったか?
といった風に「もれはないか、もれはないか」としつこくチェックすることができる。
「移動」「宿泊」「遊び」のフレームワークがあれば、「もれ」は防げるかもしれないが、しかしこれだけでは心もとないと言った心情になることもあるだろう。
その時には、新たに自分で旅行の持ち物について自分で新しいフレームワークを作らなければいけない。
新しいフレームワークを作るということ、それは実は戦略コンサルタントが使用しているノウハウであり、彼らが「無意識」で処理している領域だ。では、どのように新しいフレームワークを作ることができるのかというと、6次元で発想するという方法がある
6次元とは、大きく2つに分けられる。それが「目に見える3次元」と「目に見えない3次元」だ。
目に見える3次元とは、
であり、
目に見えない3次元は
このように分類される。
変な切り口に感じるかもしれないが、これらでおおよそ世の中の「全体像」はこれで説明できる。自分の持っているフレームワークに限界を感じた時はこれらの次元で考えてみてほしい。ただ、ここで注意すべきなのは、その視点、その場面に適合した全体の状況にあったフレームワークを用いることが大切だ。
これらを用いて考えなおせば、「もれ」が見つからない新しい切り口が発見できる。
7.さらに良いMECEを作成するには、よきフィードバックが必要
ここまでで、もうほぼ100%のMECEが出来上がっているはずだが、最後の最後で大きくぶれないためにどうすればいいか念をおしておこう。
MECEにしようとしていたものがきちんとした切り口で、万人に意味の通るものにしたければ、やはり適切な指導者が必要になる。
なぜなら、いくら自分でトレーニングしたところで、MECEを作っているを作っている張本人は、自分で間違えていることに気がつけないからだ。
ここに大きな落とし穴がある。
何がどう間違っているか、しっかり把握して常に客観的に改善していかなければいけない。これはMECEにおいて必須のステップと言っても過言ではない。そのためにも、MECEを正してくれる指導者がいた方が良い。
もし、指導者がいなければ、最低でも誰かにチェックしてもらおう。
客観的に自分の作ったMECEを見てもらうことで、自分では見逃していたことに気づける場合は多いからだ。
MECEは目的意識を持って使うことが大切
さて、ここまでとてつもなく長い説明をしてきたが、多くの人がMECEを学ぼうとして、なかなか理解できないのは当たり前のことだ。
有能なコンサルタントのようにMECE自由自在に使いこなすためには、2年間集中したトレーニングが必要だと言われている。一般の人が付け焼き刃で使いこなすにはなかなかハードルが高い。
ただ、ここまで説明そのものが付け焼き刃だったと言いたいのではない。たいていの人が、MECEなどのロジカルシンキングを難しく考えて諦めてしまうのは、コンサルタントの現場としてのツールとして捉えてしまっている場合が多い。
ここが大きな誤認で、目的とツールが食い違っているから、「できない」と感じてしまうのだ。
ツールとしてのMECEではなく、しっかりあなた自身の目的意識を持って使うことが大切だ。
実際に行動する前には必ず「こうしたらもっと良くなるのではないか?」というまだ見ぬ未来に向かっての仮説を立てるためにMECEを使おう。
そうすることで初めて、スピードを意識し、より効率よく、最高の仕事におけるアウトプットを生み出すためのツールとしてMECEが活きてくるのだ。
それを理解できれば、あとはこの記事に書いてあった。「視点を揃え」「切り口を考え」「もれダブりのチェック」を繰り返し意識し訓練すれば、日常や仕事の至る所で少しずつ生きていくるだろう。
MECEをうまく活用し、今より有意義な時間が少しでも増えれば幸いだ。
引用・参考文献
・高田貴久,2004,英治出版 ,
『プレゼンテーション ― 自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」』
・岡田 恵子・照屋 華子,2001,東洋経済新報社,『ロジカルシンキング』
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