現代のビジネスパーソンが知っておくべき「問題発見力」

あなたは難しい問題に直面して、答えが見つかるアテもなく悩み続けた経験はないだろうか。また、問題解決のめどが立たず、先行きの見えない議論に明け暮れ、どうしようもない状態に立たされたことはないだろうか。そんな時に適切な問題を発見し、迅速に解決できればどんなにスマートな事か。

問題をスマートに解決するために必要なのは、まず適切に問題を発見することが求められる。そこで、この記事では、あなたに「正しく問題を発見する手法」についてお伝えする。

もし、あなたが問題を抱えていたり、「問題発見力・問題解決力」の必要性を感じているのであれば目を通してみてほしい。問題とはどのように発生するのか、問題を正しくとらえるにはどうすればいいのか。その手法がわかれば、問題を素早く解決に導くヒントになるだろう。

1.本質的な問題を発見するための3要素

タイトルに「問題発見力・問題解決力」と書いてはいるが、一番大切なのは問題を発見する過程だ。なぜなら、問題は設定次第でその問いに対する答えが大きく変わるからだ。イメージとしては問題発見力があっての問題解決力だと捉えてほしい。では、問題を発見するとはどういうことなのか、可視化するとこのような図になる。

problem1

この図に示されているように、悩みの種である問題は、

1. 「あるべき姿」
2. 「現状」
3. 「ギャップ」

この三要素のみで構成されている。つまりこの三要素さえきちんと把握できれば理論上、問題に悩むことなく建設的に未来に向かうことができるというわけだ。そこで一度、あなたが取り組もうとしている問題に対して、以下の問いに答えてみてほしい。

– 「未来にどうなっていればいいのか?(あるべき姿)」
– 「今実際どうなのか?(現状)」
– 「今と未来との差はどれくらいあるのか?(ギャップ)」

どのような答えが出ただろうか。これら3要素に対して、深いレベルで答えられないのであれば、どうしても本質的な問題はハッキリせず、悩んでしまうことになる。そうならないために、これから各要素について詳しく説明していこう。各要素について知ることで、あなたは問題に対して今より深く考えることができるだろう。

2.「あるべき姿」を明確にすれば、良い問題を設定できる

あるべき姿問題発見の最初のステージとなるのが、まず「未来をどうしたいか」だ。目標となる「あるべき姿」を明確にしなければいけない。「あるべき姿」は言い換えると、個人や組織が達成すべき「ビジョン」や「目標」である。あるべき姿をイメージできなければ「現状」とのギャップが見えず、問題も見えないことになってしまう。そうなると、本質的な問題は先送りされることになり、結局は何も解決しないという最悪の事態に突入する羽目に陥るのだ。

振り返ってみて欲しい。あなたが悩んでいた問題に対して、

「それをどうしたいのか。」
「どうなればそれがゴールになるのか。」

明確に設定できていただろうか?おそらく、大枠は設定できていたものの、鮮明には設定できていなかったはずだ。もし、何かに対して悩んでいたのなら、あなたのビジョンはまだぼんやりとしたものだったに違いない。その状態だと、どうあがいても問題に対して悩み続けてしまう。

問題に悩まないためには、まずはあるべき姿についてしっかり見直し、ビジョン構成力を身につけることが大切だ。では、どうすればビジョン構成力が身につくのか。その疑問を解消していこう。

ビジョン構成力、つまり鮮明に未来を描くためのツールとして、あるべき姿構成のための4つのPというフレームワークがある。このフレームワーク通りに当てはめればきっと、あなたの直面している問題のあるべき姿が明確になってくるだろう。

3.あるべき姿構成のための4つのP

あるべき姿を構想し、問題発見するにあたって、これから説明する4つのフレームワークを自分に当てはめて考えてみてほしい。そうすると、本来自分が認知できていなかった正しいあるべき姿を描けるようになる。後ほど1つずつ説明していくが、まず全体像を把握して頂きたい。

  1. 目的(Purpose)
    「何のためにやるのか」
  2. 立場(Position) 
    「誰にとっての問題なのか」
  3. 空間(Perspective) 
    「問題を俯瞰してみたか」
  4. 時間(Period)
    「どの時点での問題とするのか」

こちらが全体像になる。これら4つは密接に関わりあっており、1つが決まれば他の項目も自然と導きやすくなる。もし自分にとって当てはめにくい項目があれば、当てはめれるところから考えていってくれても構わない。最終的に、様々な角度から調節すれば良い。では、早速1つずつ解説していく。

3−1「目的(Purpose)」を明確にし、最優先のあるべき姿を選定する

target

人間の行動には必ず「目的(purpose)」が存在する。しかしこの、目的である「何のためにやるのか」を明確に自分で認識している人は少ない。例えば、自分が努力しているのは、成功するためなのか。何のために努力しているのか。といった「何のためにやるのか」をきちんと自分自身で把握した上で定義することは重要だ。今一度あなたの問題や課題に対しての目的は何か考えてみよう。

  • 「何のために」行動するのか
  • 「何のために」そちらに向かうのか
  • 「何のために」そう決めたのか

これらをきちんと答えられるだろうか。なぜ、「何のために」を認識するのが大切なのかというと、多くの人は本来の目的を達成するための活動や行動、手段それ自体が目的になってしまう場合が非常に多いからだ。例えば、当初の目的は「英語を話せるようになる」だったとする。しかし、手段である「TOEICの点数を上げる」ことが目的となってしまい、結果的にTOEICの点数は上がったが、英語は話せるようにはなっていない。というのはよく聞く話だ。

そうならないために大切なのは、「そもそも何のために?」と自分に問うてみることだ。そうすることで、自分にとって最優先の問題が見えてくる。

3−2「立場(Position)」を見極め、「あるべき姿」の真相を知る

position

人は「立場(Position)」によって大きく意見が異なる。だからこそ問題はフェアに決定しなければいけない。フェアに決定しなければ、自分にとって本当に解決すべき問題かどうか不明確なまま物事が進んでしまう。

同じ組織にいても、社長と従業員では大きく視点が異なるし、同じ事象が起きても、それに対する問題の認識は立場によって大きく異なる。例えば、地価の下落は、不動産にとってはバッドニュースだが、新たに住宅を取得しようとしている人にとってはグッドニュースになる。そうすると、不動産側だった場合と住宅を取得しようとしている場合ではあるべき判断はきっと異なるだろう。

あなたは、問題に対してゼロベースで考えることができているだろうか?
固定概念にとらわれず、物事を始めからやり直して考えたり、本質的なものの見方をできているだろうか?

一つの会社の例でいうと、

  • 組織にとっての問題なのか
  • 個人の問題なのか
  • 従業員の問題なのか
  • 社長の問題なのか

このように誰にとっての最重要の問題なのか、中立的な立場で判断をくださなければ、それは取り組むべき問題になりえない。自分の視点だけにとどまらず、他者の視点をリアリティを持って考えることが大切だ。

3−3漠然と見ていた物事を「空間(Perspective)」の枠組みで捉え直す

perspective問題を小さな範囲で見るのか、それとも大きな範囲で見るのか。どのような範囲(Perspective)を持って考えるかで、問題は大きく異なる。この範囲の基準をしっかり持っておかないと、どうしても視野が狭くなりがちになったり、逆に視野が広くなりすぎて現実からかけ離れすぎたりしてしまう。

スポーツでも、地域の小さな大会で優勝するのが自分にとってベストの課題なのか、それともオリンピックで金メダルを取ることがベストの課題なのか、身の丈にあった課題を設定しなければ、自分にとって大切な成長の機会が失われてしまう場合がある。

しかし、そうは言っても、どの範囲で設定すればいいかイマイチよくわからなくなるかもしれない。そこで、バードウォッチングのように考えてみることをオススメする。自分が見たいと思う鳥を見ようとする時、双眼鏡の焦点を動かしてはいないだろうか。はじめは鳥がぼやけて大きく見えたり、遠すぎてよくわからなかったりするかもしれないが、いろいろ動かしているうちにバチッと焦点があってお目当ての鳥が見えるようになる。

範囲の広さを設定するのに迷ったのなら、バードウォッチングと同じように、少しずつ適切な範囲を定めていくと良いだろう。常に範囲基準を広げ、適切な範囲を定めることを忘れないでおくと、目的の抽象度や視点が上がり、思いもよらなかった本質的な問題が見つかる場合もあるだろう。

3−4解決できる問題を設定するためには「時間(Period)」も意識する

period

時間軸(Period)によっても問題は大きく変化する場合がある。だからこそ自分にとって適切な時点での問題を発見し、設定しなければいけない。なぜなら、現在・未来それぞれの時点によって、問題意識が異なってしまうからだ。

例えば、交通事故の問題だと、

事故発生(現在) 数日後(未来)
負傷者の手当て・事故渋滞 信号の未整備による同時点での事故の再発

となり、事故発生と遠い未来では大きく状況が異なると言える。この場合、事故発生当時に信号の未整備がどうこう言うのは適切であると言えない。事故発生当時にすべきことは、負傷者の手当てや交通整備などである。

時間軸の設定によって、問題は変化する。問題を捉える時間軸にズレがあると、問題は解決しない。一つのアドバイスとしては、時間軸はできるだけ未来で考えた方がいい。なぜなら、あまりに近すぎる現在だと、どうしても過去の枠組みにとらわれてしまい、問題がクリアに見えてこないからだ。それを踏まえた上で、時間軸の設定は鮮明に描けるレベルで未来においておくべきだ。

ここまでであるべき姿の4つのPは終了だが、あるべき姿を鮮明に描けるようになっただろうか?

あるべき姿は様々な観点から見ることで新しく発見できたりする。「あるべき姿」を問い直す作業というのはとても重要だ。納得のいくまで、様々な要素を元に考え続けて欲しい。

4.意外と把握できていない自分の「現状」

現状たとえ「あるべき姿」が正しく見えていても、「現状」の捉え方が浅いか、もしくは間違っている段階では問題は正しく発見できない。「現状」の正しい把握を阻害する要因としては、次の二つがある。

1. 意識:「現状」を直視する問題意識の欠如
2. スキル:「現状」を把握する分析スキルの欠如

これら二つの要素を完備することで正しく「現状」を把握することができる。

4−1「現状に対する意識」はビジョンを達成させる

現状について直視し、問題意識を持つことは大切だ。多くの当時者は、そもそも「現状」の何がおかしいかに気がついていない。漠然とした問題意識を感じて悩んでいても、現状を直視していなければ、問題はきちんと設定されない。

例えば、あなたが外出時に空を見上げると、雨が降りそうな雲行きだったとする。雨が降ると嫌だなと思いつつも、実際には傘を持たないで出かけてしまうことはないだろうか。その後、結局雨は降っていしまい、雨に濡れた経験は一度はあると思う。

これは一体何が悪かったのか。

ズバリ現状を直視する問題意識が低いのだ。もし、現状を直視し、雲行きがあやしいと判断した段階で天気予報をチェックしていれば適切な問題対処ができたであろう。

「傘を持っていくのが面倒」
「もし降らなかったら傘をなくしてしまう」
「天気予報で確認するのが面倒臭い」

上記のような様々な要因によって現状を見ようとする意識が失われてしまう、そうなるとどうしても「雨に濡れないでおく」というビジョンを達成することができなくなる。ビジョン達成のためには、現状をしっかり意識し問題意識を起こさなければいけない。

4−2現状を正しく判断するための「分析するスキル」

現状を分析するスキルはより良い問題を発見するために必要になる。

なぜなら、現状を分析できるスキルが欠如してしまっていては本質的な問題を把握できないからだ。また多くの人は、問題が発生してもそれを処理しようとするだけで、現状を分析し、問題の本質を把握しようとしない。例えば、昔取り組んでいた学校の宿題もそうだと言える。あなたは宿題を課されてもそれを達成するだけに終わり、なぜその宿題が出されているのかと分析していただろうか。その宿題が出される意図を把握した上で取り組んでいただろうか。

ただ与えられた現状ではなく、「自身の成長のため今この現状があるんだ」と分析できていれば、取り組む姿勢も違ったはず。常に現状をしっかり分析できると、そう言った問題意識が芽生えてくる。

5.ギャップ(問題)の把握

ギャップあるべき姿や現状が明確であってもギャップ部分が自動的に選定されるわけではない。あくまで、自分でどれくらいギャップが生じているのかを認識しなければいけない。きちんと問題を捉えないまま問題を解決しようとすると、元々の問題が解決しないどころか、新たな問題が発生してしまう。さらには解決のための戦略的方向性や時間などのリソースが散漫になってしまう。

ギャップの把握の際に注意しておきたい点は

  1. 問題となるギャップを曖昧にせず、本質を追求する。
  2. 問題の原因があれこれあって、優先順位づけが大変だからといってすべてを解決しようとしない。

この2点になる。

5−1問題となるギャップを曖昧にせず、本質を追求する。

ギャップは曖昧にせず、本質を追求しなければいけない。なぜならギャップ部分の問題を表面的にしか見なかった場合、向かうべき方向に向かえなくなることがあるからだ。例えば、ある商品のシェアや売り上げが下がった、といった現象だけ捉えて、「シェアが下がったからシェアをあげろ」と決めつけることは向かうべき方向ではない。

この場合、シェアが下がってしまったのかという本質的な問いかけをすべきだ。問題の本質を具体化しない限り本質的な解決策のある問題に行き着くことはできない。

ギャップを捉えるときに注意したいのは、本来個別レベルで捉えなければ真相が見えないものをマクロ視点といった大きな視点で見てしまい抽象的なものにならないようにすることが大切だ。

5−2問題の原因があれこれあって優先順位づけが大変だからといって、すべてを解決しようとしない。

問題の順位づけはしっかりすべきだ。

現状からあるべき姿に向かっていくために、何が本当に大事な問題か、何から解決すべきなのかがわからない状況というのは、問題が大きなものになるにつれて起きやすい。なぜなら問題が大きくなればなるほど、4Pでも話した「立場」によって、問題の捉え方がバラバラになってしまうため、収拾がつかなくなってしまうからだ。

ビジネスの場合、解決しない問題に取り組むということは、新たな問題を生じさせるとともに一方で新たなチャンスを逃し、機会損失を起こしてしまう。

解決しない問題というのは、

  • 「問題そのものの捉え方が間違っている」
  • 「取り組むべき問題の優先順位付けができない」

場合が多い。問題を的確に捉え、さらに具体的に何が優先すべき問題なのかを順位づけることが大切だ。あれもこれも、と悩むだけでどれ一つとして明確にならないのであれば、

– 問題の「広がり」と「深さ」を捉えながら問題を深堀する
– 優先順位の「重み」づけを行うために4Pを使用する
– もう一度最も一番良いあるべき姿を考える

この3点を意識するとより良いギャップ(問題)が生まれるだろう。

最後に

あるべき姿→現状→ギャップとステップを踏んで問題発見のステップと注意事項を示してきた。

ここで言うのも何だが、問題を発見すること自体、非常に難しい。だからどうしても悩んでしまうことが多いし、知らない間に悩んでしまっている。ただ、そういう時に意識的に「自分は悩んでいる」と自身で認識できるかできないかが大切だ。そうすることで改めて、「考える」を意識できる。

結局何をするにしても大事なのは、明確な「あるべき姿」に向かって、どうすればいいか「考え」、そしてアクションを起こすことができるかどうかだ。それはいかなる場合でもそうだと言える。変化の大きいこの時代において正解はない。しかし、失敗や変化が起こるたびに軌道修正すれば、あるべき姿に向かうことは決して不可能なことではない。

自分自身のあるべき姿
組織のあるべき姿
日本、世界のあるべき姿。

それらがよりよいものになるように、
もっとも適切な問題を発見し、あなたの未来を変えていってほしい。

問題を発見する過程で壁に直面した時、問題に対してより深く考えるためのガイドラインとしてほんのすこしでも参考になれば幸いだ。

引用・参考文献
2001,齋藤 嘉則,ダイヤモンド社,『問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」』