あなたは自分が書く文章において、最も伝えたいことを適切に相手に伝えることができているだろうか。もしくは説明できているだろうか。「人に何かを伝える」というコミュニケーションにおけるゴールは、相手に適切に理解してもらうことだ。相手に適切に伝える最も有効な技術として、ピラミッドストラクチャーというものがある。
もしあなたが、
- 文章を書くことにハードルを感じている
- わかりにくい文章を書いてしまっている
- 論理的に話を組み立てれるようになりたい
- 何かを相手に伝えることに対してうまくいかないと感じている、説得感をもたせたい
- ピラミッドストラクチャーとロジックツリーとの違いがわからない
このように感じているのであれば、ぜひピラミッドストラクチャーの概念をまず正確に理解してみてほしい。
ピラミッドストラクチャーを学習し、実践すれば、あなたの文章技術や伝える力が確実に高まる。自分の伝えたいことが明確に相手に伝わるようになれば、コミュニケーションに困ることは無くなるだろう。さらには、あなたから発信された言葉の数々が人々に影響を与えることになり、あなた自身の影響力が高まることになる。
この記事では、あなたにピラミッドストラクチャーの概念までをお伝えし、その有用性を感じて頂ければと思う。
目次
1.ピラミッドストラクチャーとは?
まず、はじめにピラミッドストラクチャーとは何かについて簡単にお伝えする。ピラミッドストラクチャーとは、かの有名なコンサルティング会社マッキンゼーのバーバラミント氏により考案された。一言で言うならば、「文章コミュニケーションを正しく機能させるための図解ツール」である。以下のように自分の最も伝えたい「主張」とそれを支える「根拠」を図式化したものになる。
この図式通りにあなたの主張と根拠を適切に当てはめ、コミュニケーションを行えば確実に相手に伝わるようになるだろう。なぜなら読み手の思考に合わせて話を伝えることができるからである。
1−2.ピラミッドストラクチャーを使う場合、使わない場合
ピラミッドストラクチャーを使用して書いた文章を1つ紹介しよう。
以下の文の最たるメッセージは何か、感じ取りながら読んでみてほしい。
今、私は忙しい。その理由は3つある。
1つは、納期が迫っている仕事をたくさん抱えているからだ。
2つは、没頭できる趣味を見つけたからだ。
3つは、子供の面倒を見なければならないからだ。だから私は忙しい。
この文章からあなたは何をメッセージと感じただろうか。答えは、「忙しい」だ。
この文章は最初に主張を持ってきているので比較的わかりやすい。さらに「忙しい」という主張に対して、忙しい理由を3つ提示しているので受け手側からの「納得」も得ることができる。逆に、もしピラミッドストラクチャーを使わない場合どうなるか、以下のようになる。
「仕事の納期が迫っている仕事が多く、没頭できる趣味が見つかって今、私は忙しい。さらには子供の面倒も見なければいけない」
この文章は、しっかりと全文を読まなければ、メッセージを理解できない。また、この文章を客観的に分析すると、本当に伝えたいことである「忙しい」より「子供の面倒をみないといけない」といったイメージの方を持たれたしまうことがある。
こういった「正しく伝わらない文章」をあえて図式化すると以下のようになる。
こうしてみると、ピラミッドストラクチャーで整理されたものに比べて、一見して何が言いたいのか把握することは難しくなるだろう。こうした伝え方をしてしまうと、聞き手側としては、メッセージに対して、労力を割いて解読しなければならない。また、途中であなたの主張が何かわからず曖昧になってしまい、適切に理解してもらうことは不可能になってしまう。
主張や結論をまずトップに持ってきて、その後そこから伝えたいことを補強する理由や根拠を指し示してあげると、読み手側の負荷を下げることができる。そのためには一度ピラミッドストラクチャーを使って、「伝えたいこと」をフレームワークに落とし込んでおくといい。
2.ピラミッドストラクチャーとロジックツリーの違い
ここで、ピラミッドストラクチャーに似ているフレームワークとしてロジックツリーを紹介して比較したい。なぜここでロジックツリーを紹介するのかというと、それぞれの違いを比較することで、ピラミッドストラクチャーの概念をより正しく理解してほしいからだ。また、ロジックツリーと混同して利用してしまう人が多いため、それを避けるという意味でも理解して頂きたい。
まずはじめに、それぞれの違いについて端的に説明すると、
ロジックツリーは、問題発見・解決のためのツールであり、
ピラミッドストラクチャーは、適切なコミュニケーション・説得を行うためのツール
である。
正確にイメージして頂くため、それぞれ図を交えて詳しく説明する。
2−2.それぞれを比較して概念を把握する
ロジックツリーは、解決したい問題の深堀や解決策の具体化に便利である。基本的に上の「概念」から下の「要素」に、トップダウンの流れで分解していく。ロジックツリーにおいては、下位の概念である「手段」「原因」「部分」などは、できるだけMECE(漏れがなく、ダブりがない状態)になってなければならない。
また、ロジックツリーは用途によっていくつかの種類がある。それぞれのロジックツリーを使用することによって、多様な思考プロセスを可視化することができる。ただ、ピラミッドストラクチャーのようにアウトプットを文章化できるかと言われると難しい。ロジックツリーはあくまで問題を解決するための手法を洗い出すツールだ。
よって、ロジックツリーは物事や問題に対して深く分析する際に活躍するものであると認識して頂きたい。一方でピラミッドストラクチャーは、主張が正しいと言えるために必要な根拠の構成のことを指す。
ピラミッドストラクチャーは、CRFの構成になっている。
CRFとは何かというと、Conclusion,Reason,Factの頭文字を取ったもので、それぞれ上から「結論」「理由」「裏付け」となる。この3段階の構成を構築するためには、基本的にトップダウンで「言いたいこと」からその理由、裏付けという段階を踏むことが多い。これは「主張」を強くするために「分析」し、根拠を洗い出すといった点ではロジックツリーと近しい思考プロセスを辿る。トップダウンの場合は、「主張」が明確な場合が多いので比較的ピラミッドを作りやすい。
2−3.ピラミッドストラクチャーはボトムアップでのアプローチが可能
ただ、ピラミッドストラクチャーはボトムアップで考えることもある。ボトムアップで考える時というのは「自分の一番言いたいことが、まだわかっていない状態」だ。あなたもいざ文章を書こうとした際に、言いたいことはなんとなく存在しているのに、うまく自身の中で結論が導き出せず路頭に迷ったことがあるかと思う。この際には、頭の中に渦巻く様々な要素をブレーンストーミングのようにひねり出して、要素をグルーピングして段落を作成していく。
例えば、「バナナは美味しい」「りんごは美味しい」「みかんは美味しい」という要素があった場合に、これらの言葉から抽象度を高めてまとめると、「果実は美味しい」となる。この繰り返しで自分の最も伝えたい1つのメッセージに辿り着くという、ボトムアップで考える方法がピラミッドストラクチャーにはある。
つまり、ピラミッドストラクチャーには構成まで2通りの方法があって、ボトムアップとトップダウンの思考の流れがあるということだ。これは実際に文章を作成していく過程に置き換えるとわかりやすい。
トップダウンは、実際にあなたが書く文章のタイトルが決まっていて、あとはそのタイトルに対して何と何があれば、よりタイトルのメッセージが伝わるようになるか考えていく手順のこと。
ボトムアップは、先ほど述べたブレーンストーミングのように、発散した要素から最も伝えたいメッセージに収束させること、というわけだ。
3.ピラミッドストラクチャー概念まとめ
それぞれの概念をまとめると以下のようになる。
ピラミッドストラクチャーの概念は、正しく相手に伝えるためのツールである。もし、有効性を感じて頂けたのであれば一度、試行錯誤してピラミッドの形に当てはめて、「一番伝えたいこと」を軸に型を作成してから文章を書いてみてほしい。きっと見違えるほど説得力のある文章になり、伝えた先に何らかの影響を与えることができるだろう。
ピラミッドストラクチャーを使って、あなたの「言葉」がより伝わるようになれば幸いだ。
ピラミッドストラクチャーの作り方についてはこちら
参考・文献
バーバラミント,1999,ダイヤモンド社『考える技術・書く技術』
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